“こころの病”研究開発室

Light Ring. のアプローチ

 Light Ring.では、ソーシャルサポート力養成講座、Light Ring Timeなどの事業を通じて、若年層の心の病を防止するための活動を行っています。心の病を予防するためのアプローチとして、心の病に罹患する恐れのある方(以下、予備軍)に直接介入することも有効と考えられますが、そのような方は自ら外部の機関に頼ることを躊躇する傾向があるため、他者が介入することは困難なのが現状です。

 そこでLight Ring.は、予備軍の本人ではなく、家族、友人や恋人など、予備軍の身近に居る支え手を対象として、彼らを適切に支えるスキルを身に付けて頂くことで、間接的に予備軍の心の病発症を予防することが可能となるという考えの下、活動を行っています。

 しかし、悩んでいる人を支える際には、自らも相手に引きずられて自分自身が予備軍化するケースが多々見られます。そのため、Light Ring.のミッションを達成するためには、前提として支え手、つまりLight Ring.の事業へ参加する方自身のメンタルヘルスを向上させることが必要だと考えています。

Light Ring.の仮説~ソーシャルサポートによる心の健康の向上~

Light Ring. は二つの仮説を立てています。

(仮説1)Light Ring. の提唱する「周囲の人に対して行う適切な支え」と心の健康指標が相関する
(仮説2)Light Ring. が利用者の方に「適切な支え」の方法を提供し、実践して頂くことで、利用者の身近に居る人だけでなく、利用者自身の心の健康も向上させることができる。

 この仮説は、「ソーシャルサポート」と心の健康についての先行研究に基づいています。

 ソーシャルサポートという専門用語はなじみのない方が多いと思いますので、以下では「支え」と表記することにします。(厳密にはソーシャルサポートには細かい定義があります。)

 多くの先行研究により、周囲の人から受ける「支え」の水準が高い人ほど心の健康水準が高いことが証明されています。これは支えを「受ける」側の視点に立ったものですが、それと同時に支えを「提供する」側についても、周囲の人を「支える」指標の水準が高い人ほど心の健康水準が高いということが示されています。

 しかし、時には支えを行うことが自身のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすこともあります。よくある例で言うと、医療・介護の現場などで、専門家がクライアントと接していく中でバーンアウト(燃え尽き)や共感疲労などが生じ、専門家自身のメンタルが害されてしまう事例が数多く報告されています。

 したがって、身近な人を支える際には、ただ闇雲に支えるだけでなく、セルフケアを行う・相手とうまく距離感を保つなどのことを心掛け、自分自身の心も気遣いながら「適切な」支えを行うことが重要と考えられます。 そして、このような「適切な」支えを実践することで初めて自分自身の心の健康を向上させることができるものと考えています。もちろん、その身近にいる方々の心の健康の向上も期待できます。

 そこでLight Ring.の事業を通して、利用者の方に「適切な支えの仕方」を身に付け、実践して頂くことで、利用者の方自身、及びその周囲にいる方々の双方の心の健康を向上させることができるという考えの下、活動を行っています。

(注)こちらにソーシャルサポート(≈ 支え)と心の健康についての先行研究をまとめていますので、興味のある方は是非ご覧ください。

後援者からの声

研究開発室の発足

 これまでの活動を通じて利用者の方の感想などを伺っていると、経験則的なものではありますが、上で述べた2つの仮説は正しいものと確信しています。しかし、これを客観的に示す資料は現在のところ十分とは言えません。

 そこで研究開発室では、アンケート調査や面接法などを用いて利用者の方々の心の状態の変化を調査し、データを統計的に解析して仮説の証明を試みています。

研究開発室の体制

・課題分析チーム

近年進行している若年層の自殺うつ増加の背景や、それに伴う社会的損失、及び自殺うつを防止する有効な手段などを、先行研究を調査することで明らかにすることを目的として活動しています。

・効果指標チーム

事業の利用者の方にアンケート調査や面接法を行い統計的に処理することで、上記で述べた2つの仮説を証明することを目的として活動しています。

研究に関する倫理指針

Light Ring.では、研究活動を行う上での行動倫理指針を定めています。 法令・倫理要綱を守り、研究活動の対象者とその周囲の人々の人格を尊重し、適切な研究を行います。 特定非営利活動法人Light Ring. 研究活動倫理指針

ご回答頂いたアンケートについて

今までご回答頂いたLight Ring.のアンケートにつきまして、協力への同意、及び情報の破棄をご要望のご回答者様は、下記お問い合わせページよりご連絡ください。 http://lightring.or.jp/contact/

研究開発室のこれまでの成果

学会発表

2019年9月7日  第43回日本自殺予防学会総会 「若者の援助希求行動としてのインターネット・SNS相談」
2018年1月29日 International Early Psychosis Association (IEPA) 第11回国際会議 ポスター発表


2018年9月22日

第42回日本自殺予防学会総会(奈良)「新宿区における自殺予防のための若者ゲートキーパー養成事業(Social Support Light Ring Time: SSLRT)の開発と実践」口演
2018年1月29日 International Early Psychosis Association (IEPA) 第11回国際会議 ポスター発表
2016年9月16日~19 国際学会48thAsia-Pacific academicConsortium forpublichealth「Social Support and Its Influence on Mental-Health for the Helper」Measurement and Evaluation Team口演

研究受託

SNS・インターネット上での自殺対策について、政府研究に参画
自殺対策総合推進センター(JSSC)が運営する「平成30年度革新的自殺研究推進プログラム」にて「インターネット・SNS等の仮想空間における若者の援助希求に関する意識と時差圧対策の背作的方向性に関する研究」の研究分担者を受任いたしました。

予備調査結果

これまで研究開発室が行った予備調査結果をまとめています。

2014年8月20日ソーシャルサポート力向上による若者のうつ病予防推進>PPT

2016年11月30日 第1回NPO法人Light Ring.倫理審査委員会を開催  
2016年1月29日 ソーシャルサポートの提供が抑うつに及ぼす影響の検討 >PPT
2013年10月12日 第10回 Light Ring Time「支え手」のためのワールドカフェ」 >PPT
2013年5月18日 第8回 Light Ring Time「支え手のフレームワーク」 >PPT

 

研究開発室メンバー募集について

 現在、研究開発室では新しいスタッフを募集しています。 特に、心理学に精通している方や、統計処理に慣れている方を積極募集しています。 詳しくは以下のページをご覧ください。

採用情報

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