Light Ring.マガジン
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効果的な傾聴のコツとは?
皆さんは、家族や友人、恋人など身近な人から悩みを打ち明けられた時、「相談に乗る」という行為が意外に難しいと感じたことはないでしょうか? 「相手の悩みを解決してあげられないかもしれない」「相手の役に立つような言葉をかけてあげられなかったらどうしよう……」と、不安に思う方も多いのではないかと思います。
しかし、相談をしたからといって、相手があなたに「悩みを解決してほしい」と思っているとは限りません。では、どうすれば上手に相談に乗ることができるでしょうか?
悩みを相談されたら、まず「どう聴いてほしいか」確認する
当法人では、相手に対して、まず「どのように悩みを聴いてほしいか」確認することをおすすめしています。以前、当法人が行った調査で、悩みを持つ人が相談相手に求める反応は、次の3つに分類できることがわかっています。

例えば、身近な人から相談を受けた時にこの3つを提示し、どういう反応が欲しいか相手に選んでもらうと、その後のコミュニケーションがスムーズになるでしょう。
相手を理解するために。傾聴の心構えとポイント
傾聴とは、話し手が自分自身に対する理解を深め、建設的な行動が取れるようになるようサポートする手法です。その本質は、「聴くテクニック」ではなく「相手を理解する」こと。身近な人に悩みを打ち明けられたら、次の7つのポイントを意識して話を聴いてみてください。
- 視線
相手に緊張を与えないよう凝視せず、ときどき目線を外すなど目配りを意識します。 - 姿勢
腕組みや貧乏ゆすりなどに気をつけて、相手に話しやすいと思われるよう心がけます。 - 声
聞き取りやすい声の大きさや高さ、抑揚を意識し、相手の話すペースや波長に合わせます。 - 相づち
「そっか」「うんうん」「そうだね」など、タイミング良く状況に沿った相づちを打ち、話を促します。 - 繰り返し
相手の発言のうち、語尾もしくは重要な発言を汲み取り、同じ言葉を1、2語繰り返します。また、事柄と感情を結びつけ、相手の発言から読み取れる感情を相手に返します。 - 要約
相手が話した内容から、特に重要なポイントを見つけ出し、流れや情報を整理して相手に伝えます。 - 質問
閉ざされた質問(「はい」「いいえ」や簡単な事実で答えられる質問) と、開かれた質問(whatやwhyを含む、聴かれたことに対して自由に回答できる質問)のバランスを意識して、相手が自分の話を進められる雰囲気を作ります。
まずは相手を尊重し、たった1人の人として向き合いましょう。否定や判断をせず、言葉の背後にある感情をくみ取りながら話を聞くだけでも、相手の発言が促進されて、悩みの根幹を理解することにつながります。
傾聴に関してより深く学んでみたい方は、当法人が運営・実施している「オンラインゲートキーパー養成研修」にも参加してみてください。実践的かつさまざまな場面で役に立つ傾聴力の習得をサポートします。
「息の長い支援」のために大切にしたい3つのこと
スーパーバイザー・谷口敏淳先生
私が人を支援するときは、次の3つを大切にしています。悩んでいる人に寄り添いたいという気持ちが強い「支え手」の皆さんの参考になれば幸いです。
①完璧を目指さない
以前、「3割バッターでも良いバッターですよね」と言われたことがあります。カウンセリングを仕事にしている私たちも、ヒットを打てるのは3割くらいでいいのかもしれません。もちろん、何をもってヒットとするかにもよりますが「刺さるアドバイス」や「良い返し方を」を追求しすぎると窮屈になってしまいます。3割で御の字だと思いながら、仕事に向き合っています。
②関係の維持を優先する
悩みに寄り添っていると、相手のことを想うあまり、本質的なところを聞いてみたくなったり、相手にとって耳の痛いことを伝えなければいけないと思ったりすることもあるかもしれません。しかし、それによって関係がこじれたり、切れてしまったりすると何もできなくなります。自分自身の体調やメンタルも気遣いながら、関係の維持を優先するというストッパーの考えがあってもいいかもしれません。
③自分の感情を否定しない
相手の話を聴いているうちに、「なんでそう考えるんだ」「何度言っても伝わらない……」など、無力感やイライラに苛まれることもあるはず。そんなことを思ってしまう自分は「支え手」に適していないのではないか、と思い悩んでしまう方も少なくないでしょう。
実は、そのような感情は、私のように仕事として取り組んでいる者にも生じます。自分の感情を否定せず、自然なこととして受け止めた上で相手に関わっていくことが、息の長い支援になると思います。
スーパーバイザー
谷口 敏淳先生

臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士。総合病院精神科の心理職や大学教員を経て、“地域と医療のあいだに”をテーマに法人「サイコロ」を立ち上げ、就労支援やスクールカウンセリング、組織や対人援助職のメンタルヘルスケアなどの活動に従事。それらの活動を通じて、改めて自殺予防の重要性を感じたことから、Light Ring.の活動に参加した。