研究・調査・提言
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“こころの病”の研究開発室の発足
当法人では、設立当初から、悩みを抱える人々への支援活動を実行してきました。活動を続ける中で得たのは、「社会問題を捉えるためには、国際的な実態や国内の実態の課題分析、さまざまなステークホルダーの先行事例や情報分析、それに基づく当法人の事業の効果測定など、『課題分析』と『効果測定』の2方向からのアプローチが必要である」という気づきでした。
この気づきを踏まえ、2013年に“こころの病”研究開発室を発足しました。同研究開発室では、「課題の分析チーム」と「効果指標チーム」の2つの部署に分かれて、各種研究活動を行っております。
Light Ring.の仮説
ソーシャルサポートによるこころの健康の向上
当法人では、ソーシャルサポートと精神的健康の関係に係る先行研究を踏まえ、以下の2つの仮説を設定しております。
これまでの活動を通じて収集した事業参加者の感想やフィードバックの分析結果から、上記2つの仮説の妥当性について一定の確信を得ています。しかしながら、現時点ではこれらの仮説を客観的かつ定量的に示す十分なエビデンスは蓄積されておりません。
“こころの病”研究開発室では、アンケート調査や面接法などの社会科学的手法を用いて事業参加者の精神的健康状態の変化を体系的に調査し、統計解析を通じて仮説の証明に向けた研究事業を実施しております。
“こころの病”研究開発室の体制
課題分析チーム
近年増加している子どもや若者の自殺、孤独・孤立、うつの背景や、それに伴う社会的損失を明らかにするため、先行研究の調査を行っています。また、自殺やうつを防ぐための効果的な手段の検討にも取り組んでいます。
効果指標チーム
事業の参加者にアンケート調査や半構造化面接を行い、その結果を統計的に分析することで、先に述べた2つの仮説を証明することを目的として活動しています。
※当法人では、調査・研究活動において遵守すべき行動倫理指針を定めています。法令や倫理基準を守り、研究対象者やその周囲の人々の人格を尊重した適切な研究を行います。
ご回答いただいたアンケートについて
いままでご回答いただいた当法人のアンケートにつきまして、協力への同意、及び情報の破棄をご要望のご回答者様は、下記よりご連絡ください。
主な調査結果
2013年5月 子ども若者ゲートキーパーに共通する行動特性
当法人が提供する、悩んでいる人を支えたい子ども・若者の支え手(ゲートキーパー)を対象とした事例検討会「Light Ring Time」にて、参加者とのグループワークを通して発見した「子ども若者のゲートキーパー像」について整理しました。
どのようなきっかけで周囲の人の異変に気づくのか?
調査の結果、周囲の人の異変への気づき方は、次の2つの要因によって変わることがわかりました。
- 本人が自身の異変に気づいているかどうか
- 本人が助けを求めるかどうか
さらに、支え手(気づく側)は、以下の3つのポイントを観察することで異変に気づくことが多いことが示されました。
- 見た目(服装の変化など)
- 状態(体調の変化など)
- 行動(言動の変化など)
悩みを抱えている人への最初の声かけについて
調査の結果、声かけの方法は「支え手」と「悩みを抱えている人」との距離感や関係性によって異なることがわかりました。行動は、次の2つの軸で分類されます。
- 距離感:
間接的(見守るようなサポート) ⇔ 直接的(解決に向けた具体的な介入) - 関係性:
間接的(非言語的なコミュニケーション) ⇔ 直接的(言語を使ったコミュニケーション)
この2つの軸を使うことで、声かけの行動を分類・整理できることが明らかになりました。

2014年8月 ソーシャルサポート力向上による若者のうつ病予防推進
本調査では、ソーシャルサポート(家族や友人など周囲の人々から与えられる物資的・心理的支援の総称)の効果に関して、次の2つの検証を実施しました。
①身近な人からの支えの効果
「身近な人から支えを受けることは、子どもや若者のうつ病予防に効果がある」という仮説をもとに調査を行いました。その結果、次のことが明らかになりました。

②身近な人への支え提供の効果
「身近な人に支えを提供することは、子どもや若者のうつ病予防に効果がある」という仮説をもとに調査を行いました。その結果、次のことが明らかになりました。

2016年1月 ソーシャルサポートの提供が抑うつに及ぼす影響の検討
岡山県で開催された「第35回日本社会精神医学会〜人口減少社会における精神科医療の挑戦〜」にて、「ソーシャルサポートの提供が抑うつに及ぼす影響の検討:主観的幸福感を媒介要因として」の題で、効果指標チームの石井寛氏が口演発表を行いました。
本調査の概要
2014年の調査を引き継ぎ「他者にソーシャルサポートを提供することで、支援する側の主観的な幸福感が高まり、抑うつが軽減される」という仮説を設定し、検証を行いました。 その結果、ソーシャルサポート力がうつ病の予防に役立つことが明らかになりました。

2016年11月 第1回特定非営利活動法人Light Ring.倫理審査委員会を開催
「“こころの病”研究開発室」において、医学・医療の専門家、法律学の専門家、一般の立場を代表する外部委員5名(出席者4名)による倫理審査委員会を開催しました。
審査では「身近な人を支える人の抑うつ軽減プログラムの評価研究」について、研究責任者が内容を説明し、審議の結果、条件付きで承認されました。